「今さら聞けないシリーズ」医学統計の基本

監修:東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻
生物統計学分野 教授 松山 裕 先生

第1回「臨床研究の種類と特徴」

解説4

研究デザインとエビデンスレベル

若林先生

エビデンスレベルという言葉は、ガイドラインでよく目にします。

若林君の言うとおり、ある治療方法の効果が質の高いエビデンスで裏付けられているかは、とても重要なポイントです。では、何をもって質の高いエビデンスというか分かるかな?

円城寺先生

若林先生

うーん…観察研究のときに出た「バイアス」が関係していますか。

そう!真の値からの系統的な偏りのことをバイアスといって、誤った結論を導く原因になります。このバイアスをできるだけ排除できるような研究は、「質が高い」といえます。

円城寺先生

図

一般的に、臨床試験はバイアスを排除するように計画して研究ができるから、観察研究よりもエビデンスレベルが高いといえます。

円城寺先生

若林先生

円城寺先生、エビデンスレベルが最も高いシステマティックレビュー、メタアナリシスとはなんですか…?

システマティックレビューは、過去に行われた臨床研究を網羅的・系統的に調査して同質の研究を集め、バイアスの危険性を評価しながら分析・統合する方法です。代表的なものに、Cochrane レビューがあるけど、たぶん聞いたことがあるんじゃないかな。
さらに臨床研究を信頼できるものにしぼり、それぞれに重み付けを行ったうえで、効果指標の値を統計学的手法で定量的に統合する方法がメタアナリシスです。

円城寺先生

図

たとえば、複数の研究結果が一致しないときは、どれが正しいのか分からないよね。でも、メタアナリシスを行って複数の研究をまとめると、一定の結論を導くことができます。でも、いくらメタアナリシスだといっても、注意しないといけないことがあって、その結論はメタアナリシスが行われた時点での結論だから絶対的なものではないというのがその一つ。その後に行われた大規模なRCTと結果がちがうこともあります。

円城寺先生

若林先生

だとすると、最新の大規模なRCTの方が、エビデンスレベルは高いような気もするのですが…。

基本に戻ると、質の高いエビデンスとは、できる限りバイアスを排除した研究のことだったよね。メタアナリシスは、バイアスの影響を極力排除して、評価基準を統一したうえで、多くの研究結果を数量的、総括的に評価してあるからこそ、エビデンスレベルが最も高いといえます。

円城寺先生

若林先生

なるほど~。ところで、新薬の第Ⅲ相試験はRCTですよね。質の高いエビデンスがあって、薬として承認されれば、あとは医師の裁量で使用経験を積んでいけばいいような気もするのですが、なぜ発売後にも臨床研究をするのでしょうか。

良い質問だね。RCTのエビデンスレベルは高いけど、「厳密な比較」に重点が置かれているので、実際の臨床とは違う集団だということを知っておく必要がある。それから、観察研究よりも短期間で、限られた人数・条件の患者集団を対象とするため、まれな副作用の検出などには向いていないんだ。
より実臨床に近い条件で薬の安全性を確認するために、発売後にコホート研究、具体的には使用成績調査という登録観察研究がしばしば行われていて、私もいくつか協力してるよ。

三宅先生

若林先生

先生方のおかげで、臨床研究について理解が深まりました!ありがとうございます!

では、ここで理解度のチェックといきましょうか。

円城寺先生

若林先生

!!

大丈夫。ここまで理解できた若林君ならすぐにわかるはずよ!

円城寺先生

L.JP.MKT.ET.12.2016.0351