What's New
バイアスピリンについて
抗血小板剤による治療
お役立ち素材集
バイアスピリンライブラリー
掲載記事
動画でアスピリンエビデンス
アスピリン日本全国探訪記
過去のHot Topics
ガイドラインのポイント講義 ー脳卒中治療ガイドライン2009ー
ガイドラインとそのエビデンス
プレイオトロピック作用
学会・セミナーのお知らせ
リンク集
  • 日米欧 脳梗塞のガイドライン Aspirin GradeA Class1
  • 専門医が解説する バイアスピリン プレイオトロピック作用
  • バイエル ペーパークラフト
  • 抗血栓療法トライアルデータベース
  • ASPIRIN CARDIO
  • アスピリングリーティングカード
  • ARRIVE
  • 医師のための法律講座

下記サイト内の会員専用ページは、
「バイエル薬品医療関係者向け情報サイト
Bayer Health Village Professionals」の
ID・パスワードにてアクセスいただけます。

  • バイエル薬品 医療関係者向け情報
  • 高血圧・狭心症治療剤 アダラートサイト
  • 高リン血症治療剤 ホスレノールサイト
  • 食後過血糖改善剤 グルコバイサイト

掲載記事

   

掲載記事の一覧に戻る

[2006年12月14日 (VOL.39 NO.50) p.90]

特別企画

Bayer Stroke Forum 2006/モーニング・ディスカッション

頸動脈狭窄例の治療戦略
外科的アプローチと抗血小板療法の
位置づけは日米でいかに異なるか

岡田 靖氏 中原一郎氏
寶金清博氏 橋本洋一郎氏 豊田一則氏 宇野昌明氏
J. Biller氏 C. M. Loftus氏

 日本でも,食生活の欧米化などを背景に頸動脈狭窄症が増加している。頸動脈狭窄症は粥状動脈硬化により頸動脈分岐部に狭窄を生じる疾患で,その結果,脳血流低下や頭蓋内塞栓を来し,脳梗塞の原因となる。治療としては,アスピリンをはじめとする抗血小板薬を主体とする内科治療,頸動脈内膜剥離術(Carotid endarterectomy:CEA)による外科治療などが行われている。
 本座談会では「頸動脈狭窄例の治療戦略」と題して,これらの治療法の位置づけと注意点について,日米の脳神経外科医と神経内科医が意見を交換した。討論のなかで,CEAが広く行われエビデンスを蓄積している米国に対して,日本では内科治療,最近では血管内治療が注目されている点,無症候の軽度狭窄例に対する抗血小板療法の考え方など,彼我の相違が浮き彫りになった。

司 会(発言順)
岡田 靖氏
国立病院機構九州医療センター脳血管内科部長
中原一郎氏
社会保険小倉記念病院脳神経外科部長 脳神経センター長
討論者(発言順)
寶金清博氏
札幌医科大学 脳神経外科教授
橋本洋一郎氏
熊本市立熊本市民病院神経内科部長
豊田一則氏
国立循環器病センター内科 脳血管部門医長
宇野昌明氏
徳島大学大学院脳神経外科講師
ゲスト(発言順)
José Biller氏
米国・ロヨラ大学シカゴ校神経学教授
Christopher M. Loftus
米国・テンプル大学脳神経外科学教授

本記事では,日本国外で行われた臨床試験の成績が紹介されています。国内において承認外の内容も含まれますので,薬剤ご使用に際しては製品添付文書をご参照ください。

CEA;米国では年間13万件以上実施

岡田 最初に,頸動脈病変の手術療法について,Biller先生にオープニングレクチャーをお願いします。
Biller 頸動脈狭窄の治療法としてCEAは最も一般的な血管手術で,米国では年間13万件以上実施されています。1990年代から無症候性病変および症候性病変に対してNASCET*1,ECST*2, ACAS*3,ACST*4などの大規模試験が行われ,CEAの有用性が確立しました。CEAには強力なエビエンスがありますから,それに基づいて施行することが求められます。
 治療法選択に際しては,手術リスクの許容範囲を知っておく必要があります。AHAガイドラインでは,5年生存率を改善するために許容できる手術リスクが,患者の背景別に示されており,無症候性患者 3 %,TIA患者 5 %,脳卒中患者 7 %,再狭窄患者10%となっています(表)。
 CEAの目的は血管を治すことではなく,患者を治療することです。したがって,まず患者背景を正しく把握しなければいけません。また,術前の診断はMRAや超音波ではなく,血管造影に基づいて行うべきです。米国では多くの血管外科医が超音波のみに基づいて施術していますが,これでは狭窄の進んでいない例まで手術してしまうおそれがあります。頸動脈狭窄度の測定法が米国と欧州で異なり,NASCETでの50%はECSTの75%,70%は85%に相当する点にも注意する必要がありますね(図)。
 周術期のリスク増加に関係する因子としては(1)半球性TIA(vs retinal TIA),(2)左側CEA,(3)反対側の頸動脈閉塞,(4)CT上の同側虚血病変,(5)不規則またはびらん性の同側頸動脈プラーク,(6)狭窄側大脳半球の側副血行の欠如 — が指摘できます。ちなみに(2)は,大半の術者が右利きであるためでしょう。
 一方,CEAの適応判定に際しては頸動脈狭窄度だけでなく,脳卒中やTIA,冠動脈バイパス術,腹部大動脈瘤手術の既往など,臨床症状や病歴も考慮する必要があります。同時に,種々のリスクファクターのコントロールも不可欠です。CEAはあくまで血管局所に対する治療であり,高血圧症,糖尿病,高脂血症,生活習慣などをコントロールして,予後の改善を図ることが肝心です。
*1 North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial
*2 European Carotid Surgery Trial
*3 Asymptomatic Carotid Atherosclerosis Study
*4 Asymptomatic Carotid Surgery Trial

CEA適応の判断が難しい症候性の軽度狭窄例

中原 Biller先生のレクチャーを受け,前半では外科的治療の適応について議論していきます。頸動脈狭窄症は無症候性と症候性に大別できますが,無症候性の場合,どの程度の狭窄からCEAに踏み切りますか。
寶金 ガイドラインでは狭窄度60%以上例でCEAが推奨されていますが,神経学的に無症候でも,画像診断で明らかな梗塞が見つかるなど,判断に困る例は少なくありません。
Biller 無症候とは脳梗塞やTIAの既往がないことであり,頸動脈以外に病変がないという意味ではありません。ただ無症候性患者におけるCEAのベネフィットは,症候性ほど明確ではありません。ACASでは,無症候性患者にCEAを行い,5 年後の絶対リスクが5.9%減少,1 年当たり1.2%の減少でした。
橋本 無症候性患者の多くは糖尿病や高血圧症などを有していますから,無症候性のラクナ梗塞を併存する例が少なくありません。しかし,その病変と頸動脈病変の間に直接的関係はないでしょう。一方,皮質梗塞がある場合には,頸動脈病変との関連が示唆されますので,積極的治療が求められてくると思います。
中原 無症候性患者のフォローアップについてはいかがでしょうか。日本でも超音波,血管造影,MRA,CTAと,いろいろな方法が使えますが。
豊田 狭窄度だけではなく,狭窄病変の質も大事です。その意味で超音波は,プラークの安定性の評価に適しており有用だと思います。
宇野 患者さんに説明しやすいのはMRAでしょう。無症候性脳梗塞の像だけでなく,フォローアップしていると狭窄の進行やプラークの不安定化が見られることがあります。そういう症例は脳卒中を発症しやすいという結果が,JCAS*5で出ていますので積極的にCEAを行います。
*5 Japan Carotid Atherosclerosis Study

狭窄度60%以上の無症候例;
CEA施行に慎重な日本

岡田 日本では,無症候性で狭窄度60〜79%の患者の多くが内科的に治療されています。Loftus先生はこうした状況をどう思われますか。
Loftus 無症候性で狭窄度60%以上の場合,薬物治療よりCEAのほうが予後がよいという,レベル 1 のエビデンスが得られているのです。にもかかわらずなぜ躊躇するのか,理解できません。例えば狭窄度が75%の患者にCEAを勧めないのは,EBMの考え方に反することにはなりませんか。
Biller それはその通りですが,エビデンスを重視するなら,年齢に制限がある点に注意が必要です。ACSTでは75歳以上では利点が示されていません。また,脳卒中発症だけでなく生存率にも注目すべきでしょう。先ほども申しましたが,超音波だけでCEAの適応を決めるのは問題です。私たちは超音波を基本に,MRAやCTAを組み合わせて判断しています。
Loftus ご指摘のように,超音波の情報は不十分で,これを基に手術することは問題です。私たちは血管造影に基づいて適応を判断しており,これがベストと考えています。MRAも手術に必要な解剖学的情報を得るには十分ではないでしょう。
中原 無症候性では,病変が進行するタイプか,そうでないタイプかの判別が重要となりますが,フロアの先生方はどう思われますか。
松本昌泰氏 今のところ,画像上の病変が患者のリスクを表すとの証拠はありません。病変があると発症しやすいのか,頸動脈病変と脳内病変がどんな関係にあるのか明確でないため,病変が見つかってもすぐに手術は勧められません。無症候性病変への手術は,症状を惹起するリスクを伴いますので,患者説明も含め,慎重な判断が必要だと思います。
寶金 欧米のCEA手術はシャントを入れない例がほとんどで,解剖学的に日本人より手術しやすいように感じます。日本人での手術リスクの成績がないので,欧米の数字だけでは踏み出しにくい状況なのです。
宇野 JCASはランダム化試験ではありませんが,CEAも頸動脈ステント留置術(Carotid artery stenting:CAS)も手術リスクは 3 %未満と,非常によい成績でした。ただし,実際に 3 %未満を達成するのは容易ではないと思います。

CAS;
今後のエビデンス蓄積に期待

岡田 では中原先生,CASについてはいかがでしょうか。
中原 日本では頸動脈病変に対するステント使用は保険承認を受けていないため,施行は一部の施設に限られています。しかし,CASの成績は向上しており,無症候性の場合,外科手術への抵抗が強いので,CASへの期待が広がっています。プラークの形態や特徴を検討した上での話ですが,高度狭窄に進む前段階でCASを行ったらどうかとの意見もあります。JCASでは,症候性より無症候性においてCASが多く選ばれました。
Loftus 米国では無症候性病変に対するCASは医療保険の対象外です。私たちの施設でもCASは,無症候性には全く行っていませんし,症候性にも厳しい制限があります。ただし症候性では,内科治療の禁忌例などで一定の役割を果たすと思います。
Biller 米国ではCASの多くを循環器科の医師が行っています。エビデンスに基づかず,不必要な患者に施行する例も少なくないと言われていますから注意が必要です。
Loftus SAPPHIRE*6には,データの解釈などについて批判があります。総体的に見て,CASのエビデンスはまだ十分ではないと思います。
*6 Stenting and Angioplasty with Protection in Patients at High Risk for Endarterectomy

抗血小板療法;症候性では全例に

岡田 後半は,頸動脈狭窄に対する抗血小板療法について議論していきます。まず,どのような患者に抗血小板療法を行っておられますか。
橋本 症候性なら基本的に全例で抗血小板薬を使います。私は安価で十分なエビデンスをもつアスピリンを第一選択にしています。この場合,抗血小板薬の単剤投与が原則です。
 問題は無症候性でしょう。私は,最近は,狭窄度が60%以上でも手術には回さず抗血小板薬を用います。60%未満の軽度狭窄例に抗血小板薬を使うかどうかは,判断に苦しむところです。
豊田 NASCET法で狭窄度が50%を超えると手術も考えねばならないわけですから,狭窄度50%を抗血小板療法開始の 1 つの目安にしています。
 抗血小板薬の併用に関しては,最近,MATCHやCHARISMAでアスピリンとクロピドグレルの併用が検討されました。前者は脳梗塞既往例,後者は脳梗塞や心筋梗塞のハイリスク例が対象ですが,両試験とも期待された併用によるベネフィットは得られませんでした。しかし,CHARISMAのサブ解析では,症候性血管病変例で併用の有用性が示唆されました。したがって,抗血小板薬の併用は無症候性では必要なく,症候性では検討の余地を残した,と考えられます。
岡田 CHS*7のサブ解析によると,超音波で50%程度の狭窄や低輝度プラークがあると,脳梗塞発症率が 2倍強に増加するとのことですから,私はその程度になると抗血小板薬を使用しています。ただ,無症候性頸動脈狭窄に対する抗血小板療法は,日本ではまだ承認されていません。今後,保険適用やガイドラインの整備が必要となるでしょう。
Biller 今後は,狭窄度50%未満例も抗血小板療法の対象になる可能性が高いと,私は考えています。
Loftus ある患者が症候性か,無症候性かの判断は難しいと思います。慎重に行うべきです。就寝時に症状が現れ,患者自身気づいていない例もありますから。
宇野 日本人では,欧米人に比べ,高血圧性脳出血の頻度が高いと言われます。抗血小板療法に伴う出血リスクについてはどう考えますか。
豊田 出血リスク回避には,血圧管理が最も重要です。抗血小板薬を処方する医師は,責任をもって血圧管理も行うべきだと思います。
*7 Cardiovascular Health Study

周術期にも有用なアスピリン

岡田 CAS周術期の抗血小板療法については,どうなさっていますか。
中原 CASはプラークを壊して異物を入れる治療であり,抗血小板療法は必須です。私は,CAS施行時に十分な抗血小板作用が得られるよう,施行前から抗血小板薬の 2 剤併用を行います。施行後は,1 〜 2 か月後の安定した時点で単剤に戻しています。
岡田 ステント留置時の抗血小板療法は,頸動脈では冠動脈より短くてよいわけですね。
中原 頸動脈と冠動脈では血管径や血流量が異なり,再狭窄や急性閉塞のリスクは頸動脈で低いことが知られていますから。
岡田 Loftus先生は,周術期の抗血小板療法をどうなさっていますか。
Loftus 適応の点で問題のない患者であれば,私は周術期も継続して,基本的に全例でアスピリンを使用しています。この場合,術前にもし他の抗血小板薬を併用していたら,アスピリン単剤に切り替えます。いずれにせよ,症候性患者では速やかに手術を行うことが肝心です。
寶金 経験的に言って,アスピリンを継続しても,適切に手術すれば何も問題は起きません。術後,特に出血が多いわけでもありません。
宇野 最近,私たちは抗血小板薬中止後の血小板凝集能を測定してみました。すると,アスピリンの場合,中止 3 日後には血小板凝集能が回復しました。この点でも,アスピリンは使いやすい抗血小板薬だと思います。
岡田 抗血小板薬を投与されている患者が,痔の悪化や皮下の小出血をきっかけに,勝手に休薬してしまうケースがあります。これは脳卒中再発リスクを高める点で,非常に危険です。
Biller アスピリンは安価で有効性が高いこと,これを中止することは血栓形成リスクを高める点を,十分に教育する必要があるのではないでしょうか。
橋本 私たちの病院は,すべての患者をかかりつけ医に戻す,“聖域なき逆紹介”を基本としています。抗血小板薬を導入するときは,患者はもちろん,かかりつけ医の先生にも勝手に中止しないようお話しし,抜歯や手術,内視鏡治療などのときには相談してもらうようにお願いしています。
豊田 勝手な休薬を防ぐ上では,例えば抗血小板薬の服用によって,頸動脈狭窄からの微小塞栓が減った超音波所見など,抗血小板薬の有効性を目に見える形で示すといった工夫も有効でしょう。
中原 本日は,日米の神経内科医,脳神経外科医の先生にお集まりいただき,頸動脈狭窄症の治療戦略に関して話し合ってまいりました。討論を通じて,それぞれの治療の現状や相違点,これからの課題が見えてきたと思います。有意義なお話をどうもありがとうございました。

参加者コメント
松本昌泰氏
広島大学大学院 脳神経内科学 教授

 本Forumでは,頸動脈を診ることが全身のアテローム血栓症,特に脳梗塞の診療に重要である点が強調された。この認識は日本ではまだ十分なものではなく,浸透させていく必要があるだろう。
 第二に,アスピリンの使用に関して日本ではいまだに消極的な意見が存在する。今日の討論で,これは日本の特殊事情であることを痛感した。虚血性脳卒中が主体となった現在,REACH Registryで示されたような日本人におけるアスピリン使用量の少なさは,是正されなければならない課題と言えるだろう。「厳格な血圧管理を前提とした抗血小板治療は,健康寿命延長に結びつく」。この認識を,社会的に広く啓発していくべきだと考える。

本ページはバイエル薬品株式会社の提供です

掲載記事の一覧に戻る

   
What's New | バイアスピリンについて | 抗血小板剤による治療 | お役立ち素材集
バイアスピリンライブラリー | プレイオトロピック作用 | 学会・セミナーのお知らせ | リンク集