特別企画第70回記念日本循環器学会総会・学術集会
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| 座長 篠山重威氏 浜松労災病院 院長 現同志社大学 教授 |
近年,心筋梗塞や脳梗塞,閉塞性動脈硬化症などは全身性の「アテローム血栓症」の一病態と捉えられ,その共通の基盤となる血栓形成をターゲットとした抗血小板療法の重要性が浮上している。本セミナーでは,日米を代表する2人の循環器専門医が,アテローム血栓症の実態とその予防を目指す抗血小板療法の現状,エビデンスに基づくこれからの治療のありかたについて語った。
アテローム血栓症の一次,二次予防における 抗血小板薬の役割
東海大学医学部内科学系 助教授 |
危険因子は「欧米並み」だが,
アスピリンは“underuse”の日本
その結果,アテローム血栓症既往者の背景には,高血圧(約8割),高脂血症(約7割)をはじめ,糖尿病や肥満,喫煙歴などの危険因子が高率に認められ,その頻度は既往の部位が心,脳,末梢にかかわらずほぼ同一であった。地域別にみても,日本やアジア諸国で肥満の頻度が低いこと以外に大きな地域差はなく,日本人も世界の人々と同様にアテローム血栓症のリスクにさらされていることが明らかとなった(表)。
一方,日本における薬物治療の実態には,他国との間に隔たりがみられた。有効性・安全性ともエビデンスが豊富で,かつ経済性にも優れるアスピリンの使用頻度は,他国では6縲鰀8割であったのに対し,日本では5割程度と,他国を大きく下回っていた。
出血を過度に恐れず,
リスク・ベネフィットを正しく評価することが大切
アスピリンの抗血栓作用が血小板凝集抑制に基づくものである以上,出血性合併症のリスクをゼロにすることは不可能であるが,その頻度は1,000例あたり年2例程度と極めて低い。過去の豊富なエビデンスをひもとけば,二次予防症例への低用量アスピリン投与によるイベント抑制効果は出血リスクを大きく上回っており,その有用性は明らかである。また,血栓形成リスクが特に高いステント留置例では,アスピリンとチエノピリジン系抗血小板薬を併用して確実に血栓形成を予防することで,トータルのベネフィットは大きくなることが示されている。一方,一次予防では,患者の疾患や背景因子,期待される効果を詳細に検討し,慎重にリスクとベネフィットを評価することが大切であろう。そのためにも今後,日本人も含めたさらなるエビデンスの蓄積が不可欠である。
アテローム血栓症二次予防の現状と問題点 AHA/ACC新ガイドラインの注目点と 最新の大規模臨床試験の動向
Professor of Medicine, University of North Carolina, USA |
LDL-コレステロールの至適値は
“the lower, the better”へ
新しい展開は,いわゆるストロングスタチンの登場により,これまで未知の領域であった「LDL-コレステロール(LDL-C)<100mg/dL」レベルへの脂質低下の有用性の検証が可能となったことによりもたらされた。PROVE-IT(2004)では62mg/dL,TNT(2005)では77mg/dLというLDL-C値が達成され,いずれも100mg/dL程度への低下を達成した従来治療群を有意に上回るリスク低下が認められた。さらにASTEROID(2006)では,約60mg/dLというきわめて低いLDL-C値を達成することにより,IVUS上のプラーク断面積の有意な減少が認められた。これは,プラークの「進展抑制」ではなく「退縮」効果を示した初めての報告である。プラークの退縮が実際のイベント抑制効果に結びつくか否かは現在のところ明らかではないが,きわめて有望な報告といえよう。
アスピリンはすべての
アテローム血栓症二次予防に用いられるべき
こうしたなかで最近,抗血小板薬の併用に関する発表が相次いでいる。これまでのところ,脳・血管イベントの既往を有する患者および危険因子を有するハイリスク患者といった広い範囲の対象において併用療法が有効であるとするデータは得られていない。一方,出血合併症のリスクが増加することが示唆されている。そのため,現時点では抗血小板薬の併用に関して慎重な判断が必要となろう。ステント留置例など併用療法が有効とされる場合もあることから,今後さらに検証を進める必要がある。
このほか,Ca拮抗薬やACE阻害薬の効果が利尿薬やβ遮断薬に勝ることを示したASCOT(2005)や,冠動脈疾患ハイリスク患者におけるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬の有用性を示したHOPE(2000),EUROPA(2000)など,近年の大規模臨床試験の結果を受け,現行のガイドラインが改定されることになろう。
エビデンスを検討する際には,情報を正しく読み取り,不適切なoveruseやunderuseを避けることが何よりも大切であるが,その指標となるべきガイドラインの策定においては,二次エンドポイントを用いるべきでないと考える。
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