特別企画鼎 談
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| S C. Smith Jr. 氏 | 小越和栄氏 | 後藤信哉氏 |
本鼎談では,米国心臓協会(AHA)/心臓病学会(ACC)のガイドライン委員会の共同議長を務めたSmith Jr. 氏と,わが国の「内視鏡治療時の抗凝固薬,抗血小板薬使用に関する指針」策定にあたった消化器科専門医・小越氏をゲストに迎え,循環器専門医の立場から同ガイドラインの策定に尽力された後藤氏の司会のもと,活発な意見が交された。
ゲスト
Siney C. Smith Jr. 氏
Professor of Medicine, University of North Carolina, USA
小越和栄氏
新潟県立がんセンター 新潟病院 参与
ホスト
後藤信哉氏
東海大学医学部内科学系 助教授
非ST上昇心筋梗塞全例にアスピリンを投与すべき
Smith Jr. 動脈硬化は局所的な病変ではなく,アテローム血栓症という全身性の疾患であり,全身の動脈で血栓ができやすくなった状態です。したがって,アスピリンを中心とした抗血小板療法は動脈硬化性疾患治療の基本であり,心血管イベントリスクが高い患者ほど良い適応となります。われわれは,心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠症候群(ACS)症例,陳旧性心筋梗塞患者,およびステント留置例にアスピリン腸溶錠を用いており,いずれも良好な成績を得ています。
後藤 そうした患者さんに対するアスピリンの処方率はどのくらいですか。
Smith Jr. ST上昇を伴わない心筋梗塞既往例には全例にアスピリンを投与すべきだと考えています。
後藤 先頃,アテローム血栓症およびその高リスク患者を対象とした国際的な大規模観察研究REACH(Reduction of Atherothrombosis for Continued Health)Registryの登録が終了し,その結果がJAMA誌に掲載されましたが,これによると米国におけるアテローム血栓症既往患者のアスピリン使用率は70%を超えている一方,日本での使用率は60%にも届きませんでした。
Smith Jr. 米国では,血栓予防の重要性とこれに対するアスピリンの有用性が人々に正しく理解されていることが,使用率の高さに反映されているのではないかと思います。
小越 一方,日本ではアスピリンというと胃腸障害を起こしやすいという悪い印象が根強く,そのメリットを正しく理解している人はまだまだ少ない感じがします。
周術期のアスピリン休薬・継続は,休薬のデメリットと
出血のリスクを秤にかけて決定する
Smith Jr. 正確なところはわかりませんが,きわめて低率です。アスピリン腸溶錠(低用量)の導入以降,消化管出血の頻度は半減しました。
後藤 それは重要なポイントですね。日本人は欧米人よりも出血傾向が高いとされていますが,出血による入院率を検討したわれわれの成績では,欧米と日本で全く差がないことが示されました。しかし,アテローム血栓症は再発を来しやすい疾患ですので,その予防には生涯にわたるアスピリン投与が求められます。消化管内視鏡や生検などの侵襲的な手技が必要とされる局面もあるでしょう。こうした例においてアスピリンを休薬するか継続するかは難しい問題です。Smith Jr. 先生は,どのように対処しておられますか。
Smith Jr. 例えばポリープの切除など出血リスクを伴う手技を講じる場合,心筋梗塞の発作から何年も経って安定した状態にある患者さんなら短期間休薬してもほぼ問題はないと思われますので,術前3縲鰀4日と術後1縲鰀2日はアスピリンを休薬します。しかし,同じ手技でもステントを留置した方であれば,出血リスクよりもアテローム血栓症がもたらすリスクのほうが重大ですので,患者さんにその旨を説明し,アスピリンの継続をお勧めします。
後藤 内視鏡手術の際は,いかがですか。
Smith Jr. 米国のガイドラインでは,原則的には継続となっています。しかし,やはり患者さんのリスクによって中止することもあります。
小越 われわれ日本内視鏡学会でも,昨年,後藤先生のご指導でアスピリンやワルファリン使用者に対する内視鏡手術施行に関するガイドラインをまとめたのですが,米国のガイドラインとは異なり,アスピリンは原則3日間休薬としました。これは,米国では日本のように早期癌を内視鏡的に切除するようなことはほとんどなく,出血はほとんどみられないとされるのに対し,日本人では欧米人に比べて出血率が高い傾向にあるためです。休薬期間については,弘前大学の小松先生が行った日本人の抗血小板薬の検討に基づき,3日と定めました。内視鏡治療は遠隔操作で行われ,圧迫止血や縫合ができないことから,3日間休薬するというのが基本的な考え方です。
Smith Jr. ガイドラインはその国の実情に沿ったものであることが大切です。消化管出血が多い日本の事情を考慮した日本のガイドラインは,まさにその考えに則ったものだと思います。一般的に,慢性冠動脈疾患における休薬のリスクはわずかです。休薬後に必ずアスピリン投与を再開すること,その際,出血の危険を回避すること,これらに留意すれば,問題はないと思います。
後藤 抗血小板薬は継続投与が原則であり,投薬のベネフィットを上回る出血リスクが予想される場合にのみ休薬すべきものです。それだけ重要な治療薬であるにもかかわらず,昨今はマスメディアのセンセーショナルな報道が患者さんの服薬コンプライアンスに影響を与えるような状況も生じているのではないかと思います。
小越 アスピリンで潰瘍を起こす可能性は確かにありますが,その頻度はさほど高くありません。しかし,高齢者や潰瘍既往患者には注意が必要です。これらはプロスタグランジン製剤やPPIの投与で予防は可能です。
後藤 マスコミへの正しい情報発信もわれわれ医師の責務の1つかもしれませんね。
Smith Jr. 先生,小越先生,今日はお忙しいところありがとうございました。
本ページはバイエル薬品株式会社の提供です













