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[2006年7月20日 (VOL.39 NO.29) p.46]

特別企画

第31回 日本脳卒中学会ランチョンセミナー

迅速な初期虚血病変評価に基づく急性期治療戦略

CTとMRIの優劣とtr-PAとアスピリンの使い分け

平野照之氏 岡田靖氏

 急性期に対するrt-PA(遺伝子組み換え型組織プラスミノゲンアクチベータ)治療の導入は脳梗塞治療に大きな変化を与えつつある。とりわけ,超急性期に出血性脳血管障害を除外する必要があるため,画像診断は従来以上に迅速さと正確性を求められるようになった。本セミナーにおいて平野氏は,脳卒中急性期におけるCT評価の要点およびMRIの将来的有用性を示すとともに,その治療において既にエビデンスが確立されているアスピリンとrt-PAの使い分けについて解説した。

演者
平野照之氏
熊本大学大学院医学薬学研究部 神経内科学分野
座長
岡田 靖氏
国立病院機構九州医療センター 脳血管内科部長

CTを用いた初期虚血病変の迅速評価

脳梗塞急性期での使用が可能となったrt-PAであるが,出血性脳血管障害を除外する必要がある。わが国の「rt-PA静注療法適正治療指針」はCTまたはMRIを用いた画像診断による出血性脳血管障害の除外を義務づけており,「CTで広範な早期虚血性変化」あるいは「CT/MRI上の圧排所見(正中構造偏位)」が認められる場合が血栓溶解療法の禁忌とされている。
図1 表1 図2
 「広範囲な早期虚血性変化」は一般に,early CT signが中大脳動脈(MCA)領域の1/3を超える場合と理解されている1)。われわれがCTおよびSPECTを用いて検討したところ(図1),early CT sign出現頻度は虚血持続時間と相関し,残存脳血流量と逆相関していた(表1)。
 Early CT signの定量化法として再現性に優れているのはASPECTS(Alberta Stroke Program Early CT Score)法である2)。ASPECTS法は図2に示される10領域におけるearly CT signの有無を判定し,数値化する方法であるが,これにより広範なearly CTsignを認める例では,残存脳血流値が低かった。

early CT signと血栓溶解療法

 しかし近年,early CT signとrt-PA療法成績は無関係であり,発症後3時間以内なら臨床的意義はないと報告されている3)。また,2005年に報告された体系的レビューでも現状のエビデンスではearly CT signは脳卒中発症後3時間以内のrt-PA投与の効果に「影響なし」と述べているが,さらなる研究が必要であるとも述べられており4),earlyCT signの臨床的意義についてはまだ一定のコンセンサスは得られていない。
 血管原性浮腫によるearly CT signには,局所充血(BS)とBBB破綻によるものの2種類があると考えられる。後者は再開通療法により脳出血・高度脳浮腫を来すため予後不良の所見と考えられる。一方,BSは側副血管の開大による局所脳血流量の増加を反映するもので,決して予後不良の所見ではないと報告され,梗塞を免れる可能性も示唆されている5)。われわれは検討の結果,BSは細胞傷害性浮腫を来す程度まで血流は低下しているが,血流低下時間がまだ短いため皮質の吸収値が低下していない状態ではないかと考えている。

脳卒中急性期におけるMRIの役割

 わが国では現在,脳卒中急性期の初期画像診断として,84%の施設でCTが行われている[厚労省循環器病研究畑澤班]。脳卒中超急性期の虚血病巣検出率をearly CT signとMR拡散強調画像(DWI)とで比較すると,虚血病巣検出率はDWIが優るものの,出血性梗塞出現率については,虚血性変化がMCA領域1/3以下の例に限れば同等であった。rt-PAのtimewindowが発症3時間以内である点を考慮すれば,CT後DWIを追加するためにさらに30縲鰀40分の時間を要するようであれば,CTのみでの評価で適応判断すべきであると考えられる。
 一方,MRIの有用性を支持するコンセプトとしてdiffusion-perfusion mismatchの検出が挙げられる。Diffusion-perfusion mismatch領域は,機能的には障害されているがsalvage可能な脳灌流低下状態にある領域(ペナンブラ)を示すものと考えられる。Diffusion-perfusion mismatch領域がすべてペナンブラであれば,超急性期の血栓溶解療法の適応となりうるが,ペナンブラでない部位までmismatch領域として描出されるとの報告もあり6),ペナンブラ検出法としての検証は十分とはいえない。今後,MRIを用いてのペナンブラ検出によるtime window拡大の可能性が注目されており,世界で最もMRIが普及している日本こそ,この課題を解決する責務があると考える。

脳梗塞急性期における
rt-PAとアスピリンの位置づけ

 「脳卒中治療ガイドライン2004」では,アスピリン160縲鰀300mg/日の経口投与が発症48時間以内の脳梗塞に,グレードAとして強く推奨されている。
 よく知られている通り,この推奨の基となるエビデンスはCASTとISTの2試験である。それぞれ約20,000例を14ないし28日間追跡し,脳梗塞発症48時間以内のアスピリン服用の有用性を検討したもので,これらを複合解析した結果をみると7),「脳梗塞再発」や「脳卒中再発もしくは死亡」などがアスピリン群で有意に減少しており,脳出血については有意差は認められなかった(図3)。
図3 表2
 このように,脳梗塞急性期における有用性が証明されているアスピリンとrt-PAの使い分けに関する私案を表2に示す。発症3時間以内で,初期虚血病変がMCA領域の1/3を超えなければrt-PA静注を考慮する。発症3縲鰀6時間後はアスピリン200mg/日が第一選択になる。局所線溶療法の有用性はMELT(MCA-Embolism Local Fibrinolytic Intervention Trial)-Japanで示唆されているが,まだ確実ではない。われわれは非心原性の脳梗塞で,嚥下可能であればすぐにアスピリン200mg/日投与を開始し,通常は2週間経過後に100mg/日(維持量)へ減量することにしている。ただし,rt-PAを使用した場合は24時間経過した後,出血がないことを確認の上でアスピリン投与を開始する。

抗血小板薬の最新エビデンス:CHARISMA

図4
 最後に,抗血小板薬に関する最新のエビデンスであるCHARISMAを紹介する。これは脳・心血管疾患既往例,あるいは高リスクの一次予防例15,603例を対象に,アスピリン単独とアスピリン+クロピドグレル併用の脳・心血管イベント抑制作用を比較した無作為化二重盲検試験である8)。28か月(中央値)の追跡期間後,有効性の一次エンドポイントである脳・心血管イベント発症率(図4)はアスピリン単独群(7,801例)では7.3%で,アスピリン+クロピドグレル併用群(7,802例)の6.8%と統計学的有意差が認められなかった(P=0.22)。一方,重篤な出血性合併症では有意差が認められなかったものの,中等度出血はクロピドグレル併用群で有意に増加し,「総合的にはアスピリンとクロピドグレルを併用しても,アスピリン単独と比較して脳・心血管イベント抑制効果において統計学的な有意差は認められなかった」と結論された。

REFERENCES
1)LarrueVetal.Stroke1997;28:957-960
2)Pexman JH et al. AJNR Am J Neuroradiol. 2001;22:1534-1542
3)PatelSCetal.JAMA 2001;286:2830-2838,LydenP. Stroke2003;34:821-822
4)WardlawJMetal.Radiology2005;235:444-453
5)NaDGetal. Radiology2005;235:992-1048
6)Sobesky J et al. Stroke 2005;36:980-985
7)ChenZMetal.Stroke 2000;31:1240-1249
8)Deepak LB et al. N Engl J Med 2006;354:1706-1717

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