What's New
バイアスピリンについて
抗血小板剤による治療
お役立ち素材集
バイアスピリンライブラリー
掲載記事
動画でアスピリンエビデンス
アスピリン日本全国探訪記
過去のHot Topics
ガイドラインのポイント講義 ー脳卒中治療ガイドライン2009ー
ガイドラインとそのエビデンス
プレイオトロピック作用
学会・セミナーのお知らせ
リンク集
  • 日米欧 脳梗塞のガイドライン Aspirin GradeA Class1
  • 専門医が解説する バイアスピリン プレイオトロピック作用
  • バイエル ペーパークラフト
  • 抗血栓療法トライアルデータベース
  • ASPIRIN CARDIO
  • アスピリングリーティングカード
  • ARRIVE
  • 医師のための法律講座

下記サイト内の会員専用ページは、
「バイエル薬品医療関係者向け情報サイト
Bayer Health Village Professionals」の
ID・パスワードにてアクセスいただけます。

  • バイエル薬品 医療関係者向け情報
  • 高血圧・狭心症治療剤 アダラートサイト
  • 高リン血症治療剤 ホスレノールサイト
  • 食後過血糖改善剤 グルコバイサイト

掲載記事

   

掲載記事の一覧に戻る

[2006年5月25日 (VOL.39 NO.21) p.22]

特別企画

脳を救う医師たちの闘い
脳梗塞急性期治療の最前線

No.8 超急性期治療の意義とその実際

熊本市立熊本市民病院
神経内科部長
橋本洋一郎氏
中村記念病院(札幌市)
脳神経外科部長
中川原譲二氏

 本シリーズでは,“超急性期医療”“Stroke Unit”“画像診断”“チーム医療”“心疾患と脳梗塞”“総合脳卒中センター”といった多様な視点から日本の脳梗塞診療の現状を考えてきた。同時に,済生会熊本病院,東京都立荏原病院,熊本大学病院,脳神経センター大田記念病院,太田西ノ内病院,川崎医科大学病院といった最先端の施設の報告から,その到達地平と課題を俯瞰した。
 最終回となる第8回では,これまで聞き手を務めていただいた橋本洋一郎氏に話し手をお願いし,聞き手には札幌方式の担い手である中川原譲二氏をお迎えした。日本の脳卒中診療のモデルとされる地域完結型診療システム,いわゆる熊本方式はいかに形作られたのかを明らかにする。

「脳卒中は内科医も診る疾患」

中川原 橋本先生は,熊本方式と呼ばれる地域完結型の脳卒中診療システムを構築したことで有名です。本日は,その経緯と今後の展望をうかがいます。先生は,国立循環器病センターでstroke neurologistとしてのスタートを切っておられますが,どんなきっかけがあったのですか。
橋本 当時,脳卒中は脳神経外科の守備範囲で,内科が診ることはまれでした。私は鹿児島大学医学部で学びましたが,第三内科の井形昭弘教授から「神経内科医も脳卒中を診るべきだ」と教わりました。1981年に卒業,郷里の熊本大学第一内科に入局。ここは神経内科から呼吸器,循環器,消化器まで包括する大教室でした。私は神経内科医を目指していましたが,勉強するうちに循環器にも興味を持つようになりました。
 82年,神経内科の重鎮である荒木淑郎先生が第一内科教授となり,「これからは神経内科医も脳卒中を診る時代になる。脳卒中を勉強したい者は国立循環器病センターに国内留学させる」と言われました。脳卒中なら神経も循環器も同時に学べると考えて,名乗り出たのです。
中川原 そのころから,脳卒中を診ていたのですか。
橋本 研修医 1 年目から大学で脳梗塞を診る機会があり,純粋失読などの症例を経験しました。さらに研修医 2 年目に,済生会熊本病院で象徴的な例に出会いました。心房細動から脳梗塞を起こした方が,かかりつけ医にウロキナーゼを投与されて増悪,紹介入院されました。意識レベルはJCSの II -200で,皮質梗塞が多発し,頭蓋内出血を併発,著明な脳浮腫と水頭症を来していました。必死に治療を行ったところ,奇跡的に回復,車椅子でリハビリテーションできるまでになったのです。そのときに,心臓を理解していないと脳の診療はできないことを学びました。

“循環器疾患としての脳梗塞”の視点を学ぶ

中川原 国立循環器病センターに行かれたのはいつですか。
橋本 84年からの 3 年間です。
中川原 私とは少しずれますね。センターでは何を学ばれましたか。
橋本 脳卒中を「神経疾患」としてのみでなく,「循環器疾患」として診ることを学んだ点が大きかったですね。センターでは,現名誉総長の山口武典先生をはじめとして,脳卒中を内科医が治療するという空気がみなぎっていました。
中川原 今では当たり前ですが,日本では当時,脳卒中が循環器疾患であるとの視点が欠けていたように思います。私もセンターに行けと言われたとき,脳卒中を学ぶのになぜセンターなのかと疑問に感じました。
橋本 最初は驚きの連続でしたね。特に印象的なのは,stroke care unit(SCU)で,脳卒中専門医を中心に多科・多職種で構成されたチームが24時間態勢で患者のケアに当たっていた点です。脳卒中診療にチーム医療が欠かせないことを学びました。
中川原 診療科の垣根がまだまだ高かった20年以上前に,センターでは内科,外科が一緒になって診療していましたから。しかし,センターも完璧ではなかったと思います。仕事を続けるなか,陰の部分も見えてきたのではないですか。
橋本 担当医としてわれわれが最も苦労したのは,急性期治療を終えた患者の転院先を探すことです。入院は容易でも退院がスムーズにいかないのが,当時の最大の問題でした。

市中病院で脳卒中の診療に取り組む

中川原 国立循環器病センターから87年に熊本大学第一内科に戻られ,どんなことから始められましたか。
橋本 まずは人材の養成ですね。センターには内科脳血管部門だけで30人以上のスタッフ,レジデント,研究生がいましたが,熊本は私 1 人。これではどうにもなりません。荒木教授の意向もあって,若手の神経内科医を順次,センターに国内留学させることになりました。私の次が川崎医科大学脳卒中医学教授になられた木村和美先生で,現在までに15人の医局員がセンターで学んでいます。
中川原 先生の後を追い,続々と脳卒中分野に参入したわけですね。
図1
橋本 彼らがいなければ,新しいシステムは不可能だったでしょう。私は,本格的に脳卒中診療に取り組むため,93年に熊本市民病院神経内科に移りました。しかし,赴任してみると,脳卒中患者が集中しないため大きなチームが組めない,脳卒中専門医が少ない,急性期治療からリハビリテーションまでカバーしていたためベッドが足りない,リハ専門医やスタッフが少なく十分な急性期リハが行えないなど,問題山積でした。
 一方,一般病院の神経内科としては頭痛,めまいなどの外来疾患,神経難病,認知症などの診療もあります。当時,熊本市民病院の神経内科医は私と木村先生だけですから,とても手が回りません。打開策を考えるうちに,脳神経外科との連携,多科・多職種によるチーム医療,かかりつけ医やリハ専門病院との連携という発想が生まれました。まずチーム医療を進めようと考え,看護師と協力して「脳卒中の安静度拡大マニュアル」を95年に作成しました(図 1)。
中川原 これは,クリニカルパスの原型ですね。
橋本 日本にまだパスが入ってきていない時代でしたが,これで治療の効率化と標準化を図り,チーム医療を推進しようとしたのです。

地域完結型の脳卒中診療態勢を構築

中川原 リハ病院との連携は,どう進められたのですか。
図2
橋本 熊本には当時からリハ病院が多数ありましたが,急性期病院との連携が良くなかった。リハ病院には発症後数か月経って症候の固定した患者を押し付けられるとの不満があり,急性期病院には転院までに時間がかかりすぎる,ハイリスク例を受け入れてくれないといった不信がありました。両者の溝を埋めるため,95年に熊本市や周辺の脳神経外科医,神経内科医,リハ専門医にコメディカルを加えた「脳血管疾患の障害を考える会」を立ち上げました。ここで意見を交換し,かかりつけ医,急性期病院,リハ専門病院が連携する地域完結型の脳卒中診療システムを目指したのです(図 2)。
 その成果は着実に現れました。例えば,あるリハ専門施設では,92年に43日だった脳卒中発症から入院までの日数が,連携の翌年の96年には28日,98年には23日になりました。それによってリハの効果が高まり,在院日数が短くなりました。結果として,より多くの脳卒中患者を受け入れることが可能になりました。一方,急性期病院でも平均在院日数が急速に短縮,入院患者が 2 縲鰀 3 倍に増えたのです。

ドイツで学んだ入院当日からの
リハビリテーションと二次予防

中川原 リハ病院と役割を分担することで,ベッドが空き,より多くの脳卒中患者が適切な急性期治療を受けられるようになったわけですね。
橋本 ただ,それまでのシステムをガラリと変えたため,院内外からの風当たりは強く,患者や家族からは「麻痺が取れないうちに病院を追い出すのか」という苦情も出ました。
 このまま連携を強化して良いのか不安を感じていた98年に,ドイツ・ハイデルベルク大学に 3 か月間の短期留学の機会を得ました。
 ハイデルベルク大学病院は超急性期,急性期医療を担っており,100km圏内で発生した脳卒中患者はすべてここに搬送されます。365日24時間態勢で,年間患者は1,500例に上るとのことでした。高度医療に特化しているため,stroke unit(SU)の平均在院日数はわずか5.3日。急性期治療から回復期リハ,維持期リハの流れが確立しているため,患者はすぐリハ病院へと転院し,そこで家庭復帰や社会復帰を目指します。このドイツの方式を目の当たりにして,われわれの地域完結型診療システムは間違っていないと確信しました。
 診療面で驚いたのは,「安静」の概念がなかった点です。内頸動脈閉塞でも脳幹梗塞でも,入院当日から 2 人の看護師に支えられて歩行訓練に入ります。また,入院初日からヘパリン持続点滴と同時に,アスピリン内服が行われていました。
中川原 入院初日からリハビリテーションと二次予防を開始していた。
橋本 ドイツでは当時すでに,入院初日から二次予防が始まるという概念が定着していました。これは非常に参考になりました。帰国後,われわれの施設でもリハ開始を早め,入院日からアスピリン200mg/日を処方するようになりました。患者の予後は明らかに改善していると実感しています。

急性期治療,二次予防,回復期リハ,
維持期リハ,ケアをシームレスに

中川原 地域完結型診療態勢を確立するうえで今後の課題は何ですか。
図3
橋本 SCUやSUで脳卒中患者は 2 縲鰀 3週間,急性期治療と急性期リハを受け,リハ病院に転院する。ここで約 3 か月間の回復期リハを受けた後,患者の希望により介護保険対象の在宅サービスか施設サービスまたは医療保険対象の療養型病床への入院を選び,維持期リハを行う。これがわれわれの目指す地域完結型脳卒中診療の流れです。そのためには急性期治療,二次予防,回復期リハ,維持期リハ,そしてケアをシームレスで行えるシステムが求められます(図3)。
中川原 われわれの中村記念病院では,24時間の救急態勢を敷き,急性期から慢性期までの診療,在宅医療,介護支援までを一貫して行う“病院完結型”の診療を行っています。札幌方式と呼ばれていますが,熊本のようにシステムとして構築されたものではありません。患者が増えていくうちに,自然発生的に拡大してきたものです。これが今後,医療システムとして機能するのか,熊本方式の登場によって問われています。
橋本 私が当初想定したのは,実は札幌方式のような脳卒中に特化した高度専門病院にすべての機能を集約する仕組みでした。しかし,医療制度が変わり,病院の新規立ち上げは難しい。とすれば,地域にある医療資源の有効活用しかないということで,地域完結型を目指したのです。
中川原 病院完結型,地域完結型のどちらにも長所と短所はあります。われわれの一番の問題は,リハビリテーションへの対応です。“病院は急性期治療の場”との考えが強く,リハビリテーションまで目が届かなかった。最近になって,一般病床の一部をつぶして回復期リハ病院を作りましたが,リハビリテーションのいっそうの充実が今後の課題です。
図4
橋本 それは日本全体の問題です。全国の大学をみても,リハビリテーションの講座を持つところは多くありません。教育施設がないからリハ専門医も少ない(図 4)。よくTime is brain (recovery)と言われますが,早期診療のみならず早期離床,早期リハが,脳の回復につながります。リハ専門医の育成は,日本の脳卒中医療の最大の課題と言えます。
中川原 最近,厚生労働省は疾患別の診療ネットワーク構築を提唱しています。熊本方式は,正にそのモデルとなった先駆的取り組みと言えるでしょう。私たちは神経内科,脳外科と領域は異なりますが,ともに脳を救う担い手として今後も協力して闘っていきたいと思います。

Aspirin Aspects-8

いかにアスピリンの効果を高めるか竏抽・ッ因子の多角管理を

熊本市立熊本市民病院神経内科部長 橋本洋一郎

 アスピリンは抗血小板療法の基本薬であるが,さらに強力な抗血小板作用が望まれ,併用療法やより効果の強い新薬開発が検討されている。しかし強力な抗血小板作用は,出血リスク増大を伴う。生理的反応である止血血栓に影響を及ぼさず,病的血栓のみ抑制できれば理想的だが,そのような薬剤は存在しないのが実状である。
 では,出血リスクを高めず,脳・心血管イベントの発症リスクをさらに低下させるにはどんな方法があるのか。その 1 つとして危険因子の多角管理が挙げられる。多角管理とは種々の危険因子を包括的に管理することで,相加,相乗的発症抑制を目指す戦略である。
 2003年にWald NJとLaw MRは,4 種の危険因子(LDL-C,血圧,血清ホモシステイン,血小板機能)をそれぞれスタチン,降圧薬,葉酸,アスピリンで管理することにより,脳・心血管イベントを80%以上抑制し得るとのシミュレーション結果を発表した*1
 その後,Hennekens CHらは,5 つの二次予防試験のメタアナリシスを施行。スタチンとアスピリンの併用は心筋梗塞をアスピリン単独に比べ31%,スタチン単独に比べ26%減少。脳梗塞をそれぞれ29%,31%減少させたと述べている*2。また,安定狭心症患者を対象としたACTION試験では,β遮断薬,スタチン,アスピリンなどをすでに服用している症例におけるCa拮抗薬の上乗せが,心血管イベントをさらに11%有意に減らしたと報告されている*3
 脳・心血管イベントの危険因子は高血圧,高脂血症,糖尿病,肥満,喫煙,多量飲酒など多岐にわたる。抗血小板薬のわずかな効果の差を論じるより,運動や禁煙などの生活習慣修正と,個々の危険因子の厳格な管理を包括的に行うことが重要だと考える。

*1 Wald NJ, Law MR: BMJ 326: 1419-1424, 2003
*2 Hennekens CH et al: Arch Intern Med 164: 40-44, 2004
*3 Poole-Wilson PA et al: Lancet 364: 849-857, 2004

本ページはバイエル薬品株式会社の提供です

掲載記事の一覧に戻る

   
What's New | バイアスピリンについて | 抗血小板剤による治療 | お役立ち素材集
バイアスピリンライブラリー | プレイオトロピック作用 | 学会・セミナーのお知らせ | リンク集