特別企画Q&A 緊急インタビューt-PA時代のアスピリン療法をどう考えるか熊本市立熊本市民病院神経内科部長
本病態で最も広く用いられている抗血小板薬であるアスピリンとt-PAとの急性期脳梗塞治療における位置づけについて,熊本市立熊本市民病院神経内科部長の橋本洋一郎氏にご意見をうかがった。 |
t-PA静注療法後24時間たてばアスピリン使用が可能に |
Q t-PAとアスピリンを併用することはできるのでしょうか。
A t-PAと抗血小板薬(アスピリン,オザグレル,チクロピジン,シロスタゾールなど),抗凝固薬(ヘパリン,ワルファリン,アルガトロバンなど)を併用することはできません。
Q では,t-PA療法後のアスピリン使用はいつから可能となりますか。
t-PAは,過去 3 か月以内に脳梗塞の既往があれば使用できません。これは,ある例にt-PA療法を行って 3 か月以内に再発した場合,再度のt-PA療法は行えないということです。つまり,是が非でも 3 か月以内の再発は防がねばならず,二次予防の重要性はますます高まったと言えます。脳出血リスクに今まで以上の注意を払いつつ,t-PA療法施行24時間以降から,積極的な二次予防を図るべきでしょう。
また,21日以内に消化管出血の既往のある場合も,t-PA療法の禁忌となりますから,消化管忍容性のより高いアスピリン腸溶錠を用いるなどの工夫が必要だと考えます。
Q 今後,急性期治療が変わるケース,変わらないケースについて教えてください。
A t-PA療法が可能な症例は, ̄3 ̄時間以内に治療を開始できる場合に限られるなど,多くの制限事項があります。また,CTまたはMRIが24時間実施可能であること,脳外科的処置が迅速に行えることなどの厳格な施設基準も設けられています。そのため現在の日本で適応となるのは,5 %程度と考えられます。ですから急性期脳梗塞の95%は,今まで通りの治療を行うことになります。
ここで大切なことは,再発をできるだけ防ぐため,第 1 病日から二次予防が始まるという意識です。そのためにはアスピリンなどによる積極的な抗血小板療法と,徹底したリスク管理が必要不可欠です。
Q それではアスピリンなどの抗血小板薬を投与中に発症した例で,t-PA療法を行うことはできますか。
A 慎重投与にはなりますが,使用は可能です。ただし,出血リスクがありますから,万一出血した場合の対応を考え,血腫除去術の対応が可能な設備および態勢の整った施設であることが,t-PA使用の施設基準の 1 つとなっています。
Q 脳梗塞急性期におけるアスピリンの位置づけは変わるのでしょうか。
Q 脳梗塞治療をめぐる環境は,どう変わっていくのでしょうか。
A t-PA療法を行うには,発症 ̄2 時間以内に患者が到着しなくてはなりません。そのためには(1)患者が速やかに来院するよう啓発する,(2)救急隊が虚血性脳卒中を見極め,適切な施設に搬送する,(3)院内で遅延なくCTないしMRIを撮像,診断する,などの取り組みが必須となります。
AHAは2000年に,t-PA時代を見据えて一次脳卒中センター(PSC)を提案。そして今年は,総合脳卒中センター(CSC)の設立を提言しました。地域に 1 個のCSCがあり,いくつかのPSCがこれを取り巻く。すべての患者が発症から 2 時間以内にどこかのPSCに到着する,というシステムを構築しないといけません。山間部,離島などではドクターヘリやテレメディスンの活用も考慮すべきでしょう。t-PA療法の承認は,脳卒中治療を変えるだけでなく,診療システム自体の変革を迫っていると考えています。
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