イベント抑制作用に用量相関は存在するか
解説:橋本洋一郎 先生 熊本市立熊本市民病院神経内科部


   アスピリンほど,広範囲の用量で使われている薬剤は少ない。例えば近年,脳・心血管イベントに対する抑制作用を検討するため世界各国で盛んに実施されてきた臨床試験を見ても,1 日用量は20mgから1,500mgまでまちまちである。なぜ,これほど多様な用量が試みられるのか。用量と効果に相関はあるのか。
   周知のように,アスピリンは1897年にドイツ・バイエル社で開発されて以来,解熱鎮痛薬として世界中で使われてきた。アスピリンに抗血小板作用が見出されたのは,70年後の1967年のことである。その間,世界各国でさまざまな用量のアスピリン製剤が発売された。脳・心血管イベント抑制作用に関する試験は,医師主導の臨床試験として各国の剤型を用いて検討されてきた。そのため,用量が多種多様なのだという。
   アスピリンは,門脈内で血小板のCOX-1をアセチル化することで不可逆的に阻害し,自らは速やかに加水分解される。そのため血小板凝集能抑制作用は,アスピリン血中濃度と必ずしも相関しないとされている。では,至適用量は存在するのか。
   アスピリンの脳・心血管イベント抑制作用を検討した国際共同研究ATT*のメタ解析では,75mg/日未満では効果が認められず,75~150mg/日で最大のイベント抑制作用が認められた(図)。この結果から,一般に二次予防におけるアスピリンの最適な用量としては,75~150mg/日が推奨されている。

*Antithrombotic Trialists' Collaboration

アスピリンの投与量 脳・心血管イベントのリスク低下率