「循環器疾患における抗凝固・抗血栓療法に関するガイドライン」に おける抜歯に関する記載


  「循環器疾患における抗凝固・抗血栓療法に関するガイドライン(2009年改訂版)」では、抗血栓療法継続下での抜歯が推奨されている。
クラスⅡa
1.至適治療域にPT-INRをコントロールした上での、ワルファリン内服継続下での抜歯
2.抗血小板薬の内服継続下での抜歯
(循環器疾患における抗凝固・抗血栓療法に関するガイドライン(2009年改訂版) p55より抜粋)

  複数のランダム化比較試験や観察研究において、抗血栓薬の服薬継続下での抜歯の安全性が示されている1-7)。実際にわが国で行われた複数の観察研究において、PT-INR3.0以下であればワルファリン療法継続下で抜歯が安全に行えたと報告されている3-6)。
抗血栓療法下での抜歯に対する認識
アンケート調査の結果によると、抗血栓療法の継続下で抜歯を支持する医師・歯科医師は、地域差はあるものの増加している。ただし、その数は平均約4~6割にすぎない8-10)。また医師116人を対象したアンケート調査結果では、抜歯時にワルファリンを中止する医師が70%、抗血小板薬を中止する医師が86%であったという6)。さらに、日本循環器学会の専門医を対象にしたアンケート調査でも、脳塞栓症の既往があるワルファリン服薬中の非弁膜症性心房細動患者で抜歯が必要になった際に、抗血栓療法下での抜歯を支持したのは51%、頸動脈狭窄に基づく脳梗塞の既往のある患者では62%であった11)。
抜歯時に抗血栓療法を中断することによる血栓塞栓症発症リスクと、抗血栓療法下での抜歯を啓発することに加え、安全に抜歯をするための医療連携も必要といえる。
バイアスピリン錠の「使用上の注意」
バイアスピリン錠の「使用上の注意」には、慎重投与の項に次の記載がある。
手術、心臓カテーテル検査又は抜歯前1週間以内の患者
〔手術、心臓カテーテル検査又は抜歯時の失血量を増加させるおそれがある。〕

【参考文献】
  1. Evans, IL et al:Br J Oral Maxillofac Surg 2002;40,248-252.
  2. Sacco, R et al:Oral Surg Oral Med OralPathol Oral Radiol Endod 2007; 104: e18-21.
  3. 森本佳成ほか口科誌 2004;53: 74-80.
  4. 牧浦倫子ほか:抗凝固療法中患者の抜歯時の出血管理.脳卒中 2005; 27: 424-427.
  5. 森本佳成ほか:日本歯科医学会誌 2006; 25: 93-98.
  6. 矢郷香ほか:呼吸と循環 2006; 54: 993-1000.
  7. Ardekian , L et al:JADA 2000; 131: 331-335.
  8. 矢坂正弘ほか:日本医事新報 2003;4124: 21-25.
  9. 矢坂正弘ほか:脳と神経 2006; 58: 857-863.
  10. 矢坂正弘ほか:Brain and Nerve 2007; 59: 871-876.
  11. 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン