抗血小板薬服用患者では、抗血小板薬を継続のままで抜歯しても重篤な出血性合併症 なく、抜歯可能か?


  抗血小板薬を継続投与中に抜歯をしても、重篤な出血性合併症を引き起こす危険性はワルファリン服薬時よりも低い。また、抗血小板薬を中断すると、脳梗塞の発症リスクは3.4倍も高まることから1)、抗血小板薬の継続投与下での抜歯が推奨される。
  「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2010年版」では、抗血小板薬を継続したままでの抜歯について、以下のような記載がなされている。
推奨グレードB
抗血小板薬服用患者では、抗血小板薬を継続して抜歯を行っても、重篤な出血性合併症を発症する危険性は少ない(エビデンスレベルⅡ)。また、十分に局所止血処置を行うことが推奨される(エビデンスレベルVI)。
(科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2010年版p18)

服薬継続による術後出血
アスピリン100mg/日服薬患者39例中、19例を服薬継続、20例を服薬中断と無作為に割り付けて比較検討したところ、継続群における出血時間は正常範囲内で延長は認められたものの、両群で術後出血の発生は認められなかった2)。また、抜歯に際してのアスピリン100~325mg継続群と中断群の比較観察研究では、継続群で出血時間の延長と血小板凝集能の抑制は認められるものの、術後出血はみられなかった3-5)。鎮痛目的でアスピリンとアセトアミノフェンを抜歯前2日間投与しても、術後出血は両群でみられなかった6)。
止血について
アスピリン75~100mg/日または抗血小板薬2剤投与下での抜歯では、0~2%に小出血が発生するものの、止血は局所止血処置で可能であったとの報告7,8)や、アスピリンやクロピドグレル、チクロピジンを継続投与した患者の抜歯では、出血発生率は16.7%にも上ったが大部分は自然に止血するかガーゼを噛むだけで止血可能であった9)。なお、抜歯後の出血の原因としては、局所の炎症、抜歯時の器械操作による周囲組織の損傷、不適切な局所止血処置などが問題となる。
日本での検討
アスピリンなどの抗血小板薬の継続投与下に抜歯した場合、術後出血は0~2%で発生したが重篤なものはなく、局所止血で処置が可能であった10-14)。なお、抗血小板薬の継続投与下での抜歯時の術後出血の発生率は、ワルファリンの1/2以下である。
バイアスピリン錠の「使用上の注意」
バイアスピリン錠の「使用上の注意」には、慎重投与の項に次の記載がある。
手術、心臓カテーテル検査又は抜歯前1週間以内の患者
〔手術、心臓カテーテル検査又は抜歯時の失血量を増加させるおそれがある。〕

【参考文献】
  1. Maulaz, AB et al:Arch Neurol 2005;62,1217-1220.
  2. Ardekian, L et al:J Am Dent Assoc 2000;131:331-335.
  3. Brennan, MT et al:J Dent Res 2008;87:740-744.
  4. Partridge, CG et al:J Oral Maxillofac Surg 2008;66:93-97.
  5. Krishnan, B et al:J Oral Maxillofac Surg 2008;66:2063-2066.
  6. Pawlak, DF et al:J Oral Surg 1978;36:944-947.
  7. Madan, GA et al:J Oral Maxillofac Surg 2005;63:1262-1265.
  8. Mapenas, JJ et al:J Am Dent Assoc 2009;140:690-695.
  9. Cardona-Tortajada, F et al:Med Oral Pathol Oral Cir Bucal 2009;14:e588-e592.
  10. Morimoto, Y et al:J Oral Maxillofac Surg 2008;66:51-57.
  11. 岩崎昭憲ほか:歯薬療法 2008;27:17-24.
  12. 玉井和樹ほか:日有病歯誌 2007;16:17-22.
  13. 谷口佳孝ほか:阪大歯学誌 2005;49:20-23.
  14. 山崎博嗣ほか:老年歯学 1996;11:3-9.