抜歯時、抗血小板薬を中断した場合、どのような合併症が起こるのか? その対応はどうするのか?


抜歯をする場合には、原則として抗血小板薬の服薬は中断しない。また、血栓や塞栓症の発症に備えて、担当医師と術前から連携をすることが必要である。
「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2010年版」では、抗血小板薬を中断した場合の合併症について、以下のような記載がなされている。
推奨グレードA
抗血小板薬を中断した場合、脳梗塞、急性心筋梗塞の発症リスクは上昇する(エビデンスレベルⅣa)。血栓・塞栓症が発症した場合は血管内科、神経内科、循環器科、脳神経外科等による緊急的な血栓溶解療法あるいは血管再疎通療法と共に、血栓・塞栓症発症臓器の障害に対する治療が行われている。
(科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2010年版p19)


抗血小板薬を中断した場合の合併症
アスピリンを服用している脳梗塞患者309例で4週間服薬を中断したところ、13例で脳梗塞が発症し、服薬を継続していた309例での発症4例と比較して有意差が認められた1)。また、アメリカの複数の学会でのステント留置患者の抗血小板療法についての勧告では、抗血小板薬の中断により29%で血栓が発症し、急性心筋梗塞や死に至るとされている2)。さらに、急性冠症候群1236例中51例(4.1%)でアスピリンを1ヵ月以内に中断した群であり、そのうち13例は歯科治療に関連した中断であったとの報告もある3)。
抗血小板薬の中断により脳梗塞の発症は3.4倍1)、ACSの発症リスクが上がることは事実であり、注意が必要である。
日本での症例報告
脳梗塞既往例でチクロピジン200mg/日を服薬していた症例で、抜歯1週間前から服薬を中断し、中断10日目より再開したところ、その2日後に脳梗塞を発症したケースが報告されている4)。
バイアスピリン錠の「使用上の注意」
バイアスピリン錠の「使用上の注意」には、慎重投与の項に次の記載がある。 手術、心臓カテーテル検査又は抜歯前1週間以内の患者
〔手術、心臓カテーテル検査又は抜歯時の失血量を増加させるおそれがある。〕

【参考文献】
  1. Maulaz, AB et al:Arch Neurol 2005;62,1217-1220.
  2. Grines, CL et al:Catheter Cardiovasc Interv 2007;69:334-340.
  3. Ferrari, E et al:J Am Coll Cardiol 2005;45:456-459.
  4. 外山佳孝ほか:障歯誌 2005;26:216-219.