抜歯時の抗血栓療法について、ガイドラインはどのように推奨しているか
解説:森本 佳成 先生 大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座講師
循環器学会のガイドラインには「抜歯時には抗血栓薬の継続が望ましい」と記載されているが、医師と歯科医師の連携が重要であり、現在両者共通のガイドラインを作成中である。
欧米においては、抗血栓療法継続下の抜歯が可能かどうかについて、最近2報の論文が発表された。1つはPerryらがBr Dent Jに発表したもので、抗凝固薬服用患者が抜歯などの処置を受けるときの管理ガイドラインである。INR:2~4の治療域にあれば重篤な出血のリスクは非常に小さく、逆に休薬により血栓症リスクが増大することを踏まえ、「外来の歯科外科処置を行う大多数の患者では抗凝固薬を中止してはならない」ことが、grade A, Level 1bレベルで推奨されている。また、INRが治療域で安定している患者では、感染性心内膜炎の予防のための抗菌薬を1回投与しても、抗凝固薬を調整する必要はないと記載されている。出血リスクを小さくする方法としては、酸化セルロースまたはゼラチンスポンジ+縫合の併用、5%トラネキサム酸(日本では適応外)による洗口を推奨している1)。もう一つはAframianらによるメタ解析で、ほぼ同様の内容である。ワルファリン服用例でINRが治療域(3.5以下)にあれば、1本の単純抜歯では休薬してはならないこと、トラネキサム酸溶液による洗口などが有効であること、歯科処置のために低用量アスピリンを中止すべきではないことが、いずれもClass Iレベルで示されている(表1)2)。
欧米では抗血栓療法継続下の抜歯が可能かというより、抜歯に際しては基本的に休薬してはならない、という考えが主流になっている。
【参考文献】
1)Br Dent J., 203: 389-393, 2007
2)Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod., 103 (suppl 1): S45. e1-11, 2007

Medical Tribune 2008年3月6日号より一部改変