抗血小板・抗凝固療法継続下での抜歯は可能か
解説:矢郷 香 先生 慶應義塾大学病院歯科口腔外科
慶應病院では、ワルファリン、抗血小板薬とも継続下で抜歯を行っている。ワルファリン単独58例、抗血小板薬単独27例、両者併用23例で抜歯を行ったところ、後出血を見たのはワルファリン服用の2例のみであり、止血シーネで容易に止血できた。ワルファリンの治療域は日本では1.6~2.8に設定されており、この範囲で確実な止血処置を行えば抜歯時の止血にほぼ問題はない。
止血処置は、ワルファリン服用例ではゼラチンスポンジと縫合、圧迫止血を組み合わせて行う。抗血小板薬の場合、縫合と圧迫止血のみ行う(表1)。ほとんどの症例はこれで止血できるが、それでも止血できないときには止血シーネやパックを使用する。いずれにせよ局所止血処置だけで止血可能で、全身的止血処置が必要になった例はない。抜歯後の出血の原因としては、INR値よりはむしろ、局所の炎症、抜歯時の器械操作による周囲の組織の損傷、不適切な局所止血処置などが問題となる。
ところが、医師116人を対象に行ったアンケート結果によると、抜歯時にワルファリンを中止・減量する医師が70%、抗血小板薬を中止する医師は86%と、抗血栓薬継続下での抜歯に対する認識はまだまだ低い(図1)1)。
休薬による血栓塞栓症発症の危険性と同時に、「抗血栓薬継続下での抜歯は可能」との認識を浸透させることが急務である。
【参考文献】
1)呼吸と循環, 54: 993-1000, 2006


Medical Tribune 2008年3月6日号より一部改変