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抗血栓療法Q&A

糖尿病網膜症合併例でのアスピリン療法は安全か
解説:橋本洋一郎 先生 熊本市立熊本市民病院神経内科部長

 糖尿病は脳梗塞発症の重要なリスクファクターであり、急性期脳梗塞患者が糖尿病を合併している例は多い。一方、アスピリンが脳梗塞の急性期および再発予防における標準治療薬であることは広く認められている。ところが、糖尿病網膜症を合併した脳梗塞では、出血リスクを懸念して、アスピリンの使用を躊躇するケースが見られる。

 糖尿病網膜症におけるアスピリンの効果を見た大規模試験としては、1991年のEarly Treatment Diabetic Retinopathy Study(ETDRS)がある1)。糖尿病網膜症患者3,711例をアスピリン群(650mg/日)とプラセボ群に無作為割付し、7 年間にわたり観察したこの試験では、アスピリンの糖尿病網膜症に対する悪影響は何ら認められなかった。ETDRSを含むこれまでの検討から、糖尿病網膜症におけるアスピリンの効果を検証したBergerhoffらのレビュー(2002)でも、アスピリンの糖尿病網膜症に対する影響は認められないと結論されている2)

 これらを踏まえて、米国糖尿病協会のPosition Statementでは、アスピリンは糖尿病網膜症に対して禁忌ではないと言明している3)。日本循環器学会などの合同研究班による虚血性心疾患の一次予防ガイドラインでは、「冠危険因子を合わせ持つ糖尿病患者には禁忌でない限りアスピリンの使用が考慮されるべき」と記載されている4)。したがって私は、糖尿病網膜症の有無に関わらず、急性期脳梗塞患者には第 1 病日からアスピリンを使用すべきだと考えている。

1)ETDRS Research Group: Ophthalmology 98: 757-765, 1991.
2)Bergerhoff K, et al: Endocrinol Metab Clin N Am 31: 779-793, 2002.
3)Donald SF, et al: Diabetes Care 27: s84 -s87, 2004 .
4)1999-2000年度合同研究班: Jpn Circ J 65(Suppl V): 999-1065, 2001.

硝子体/前網膜出血を有する糖尿病患者におけるアスピリンまたはブラセボ投与の影響(ETDRD)のグラフ


Medical Tribune 2006年1月26日号「脳を救う医師たちの闘い 脳梗塞急性期治療の最前線」より転載

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