嚥下困難な症例でアスピリンをどう用いるか
解説:橋本洋一郎 先生 熊本市立熊本市民病院神経内科部長
脳梗塞急性期におけるアスピリンの予後改善効果は、1997年に発表されたIST*、CAST**の 2 つの大規模臨床試験で確立したと言える。両試験の結果から、アスピリンは投与開始後 2 ~ 4 週間で、1,000例当たり約10例の死亡または脳卒中再発を減少させることが確認された。また、その使用は、発症後できるだけ早期に開始すべきであることが示唆された。
ここで問題となるのは、脳梗塞急性期の患者には、嚥下困難な例が少なくない点である。アスピリンが安全に服用できない患者に対し、ISTでは坐薬または静脈内投与が採用された。CASTでは、経鼻胃管による投与が行われた。ところが日本では、アスピリンに注射剤はなく、脳梗塞に適応を有するのは腸溶錠と緩衝錠のみである。このうち緩衝錠は、粉砕が望ましくないとされている。
したがってわれわれは、腸溶錠を粉砕し経管投与する方法を行っている。消化管での忍容性を高めた腸溶錠の場合、胃では溶けない設計のため、通常は薬効発現まで 4 時間程度を要する。しかし、噛み砕いて服用した場合、約15分で効果が発現するという。
錠剤の経口投与が可能となった段階で、速やかに内服に切り替えるべきであるが、それまでは(1)胃に食物が残存しているとき投与する、(2)水分制限がなければ十分量の水とともに投与する、(3)胃腸薬と併用するなど、胃腸障害軽減のための工夫が必要となるだろう。
*International Stroke Trial
**Chinese Acute Stroke Trial
Medical Tribune 2005年11月24日号「脳を救う医師たちの闘い 脳梗塞急性期治療の最前線」より転載